近年、都市部を中心に増加しているタワーマンション。20階以上の高さを誇る住居は、充実した設備やサービス、素晴らしい眺望など、魅力的な特徴を数多く備えています。
一方で、高額な管理費用や災害時の不安など、購入前に理解しておくべき課題も存在します。この記事では、タワーマンションの基本的な特徴から、購入する際のメリット・デメリット、失敗しない物件選びのポイントまでを詳しく解説します。
これからタワーマンションの購入を検討している方はもちろん、将来的な購入を考えている方にも役立つ情報をお届けします。
タワーマンションの法的定義は存在しない
タワーマンションには、具体的な法的定義が設けられていません。
タワーマンションは20階建て以上の高層分譲住宅を意味する
建築物の高さ60メートルは20階建てに相当しますが、建築基準法には超高層という明確な規定がありません。 日本の建築物は海外の規定を参考に作られており、高さ31メートル以下の建築物が一般的でした。 建築基準法の改正で31メートルを超える建築物が増加し、超高層分譲住宅という言葉を目にする機会が多くなりました。
タワーマンションには国土交通省の認定が必要となる
タワーマンションは、建築基準法に定められた耐火性能や避難経路の確保など、厳格な安全基準を満たす必要があります。 国土交通大臣の認定を受けた建築物だけが建設を許可されています。
消防車両のはしごが届かないタワーマンションでは、災害時に使用できる非常用エレベーターの設置が義務付けられています。 高さ100メートルを超えるタワーマンションには、消防庁が定める規定に従い、屋上に緊急用ヘリポートの設置が必須となります。
タワーマンションは国の厳しい基準をクリアしていますが、長所と短所の両面があります。 これからご紹介する内容は、タワーマンションの長所と短所についてです。
タワーマンション購入の7つの利点
テレビ番組でタワーマンションの室内が紹介される機会が増え、居住する芸能人も多くなっています。以下では、タワーマンションを購入する際の7つの利点を詳しく解説します。
1. 高層階からの視界が開けている
タワーマンションの魅力は、立地や階数に応じた素晴らしい眺望です。 視界を遮る建築物が少ない場所では、遠方の山並みや海岸線までの景色を楽しむことができます。
都市部では、夜間に広がる光輝く夜景を堪能できます。 眺望を重視した設計により、大型の窓ガラスが採用されています。
2. 採光性に優れている
1階部分をピロティ構造にして天井高を確保した物件が数多く存在します。 低層階でも従来型マンションの3階相当の採光が得られます。
敷地に余裕があるタワーマンションでは、隣接する建築物の影響を受けにくい設計となっています。 明るい陽射しを感じながら快適な生活を送れます。
3. 生活インフラが充実している
食料品店やドラッグストア、医療施設、保育所、図書館などが徒歩圏内に整備されています。 駅直結や駅近の物件も多く、日常的な用事は住居周辺で完結できます。
長時間勤務の居住者にも配慮した利便性の高い環境が整っています。 再開発地域に建設されるタワーマンションでは、オフィス街や大規模商業施設が隣接しています。
4. 共用設備が充実している
多くのタワーマンションには展望フロアやスカイラウンジなどの共用施設が備わっています。 上層階からは、一般住宅では体験できない特別な眺望を楽しむことができます。
フィットネスジムや映画鑑賞室、宿泊施設を完備する物件も存在します。 在宅勤務の増加に伴い、共有オフィススペースを設置する物件も登場しています。 自宅以外の場所で仕事ができる環境は、テレワーク中心の働き方に適しています。
5. コンシェルジュサービスが利用できる
エントランスホールのフロントには、居住者向けサービスを提供するコンシェルジュが常駐しています。 24時間体制で総合的なサポートを行う物件も増加しています。
来客対応や共用施設の予約管理、宅配便の保管、配車手配など、物件に応じた多様なサービスを提供しています。
6. 防犯体制が整っている
多数の居住者が生活するタワーマンションでは、安全対策に力を入れています。
オートロックシステムやフロント常駐スタッフに加え、監視カメラや各種センサー、オンライン警備システム、複数の認証装置を導入する物件が増えています。
警備員による定期巡回を実施する物件もあり、不審者の侵入リスクは極めて低くなっています。
7. 上層階は虫の侵入を防げる
害虫は地上付近に生息することが多いため、タワーマンションの上層階では虫の侵入が少なくなります。
強風地帯となる高層階では飛翔昆虫の飛来も減少し、壁面からの侵入も困難です。 高気密設計により、外部からの虫の侵入経路も制限されます。
内廊下方式を採用するタワーマンションが主流となっています。 外廊下タイプでは照明に誘引された虫が玄関から侵入するケースがありますが、内廊下設計では虫の侵入機会が大幅に減少します。
タワーマンション購入における6つの注意点
タワーマンションには、気をつけるべき課題も存在します。 以下では、購入前に知っておくべき6つの重要な注意点を解説します。
1. 屋外での洗濯物乾燥が制限される
タワーマンションでは安全性への配慮から、ベランダでの洗濯物乾燥が禁止されています。 一部の物件ではベランダ自体が設置されていません。
高層階からの落下物は強い衝撃を生み出す危険性があります。 強風による洗濯物の飛散リスクも高くなります。
建物の外観イメージを保つため、屋外での洗濯物乾燥を制限する物件も増加しています。 室内乾燥機や浴室乾燥機の活用が必須となります。
2. 移動時に混雑が発生する
高層階建ての分譲マンションでは、垂直移動にエレベーターが必要不可欠です。 居住者数が多いため、通勤・通学の時間帯にはエレベーター待ちが発生します。
最新の物件では、建物規模に応じたエレベーターの配置や高速化により、混雑緩和を図っています。
3. 地震の揺れ幅が大きくなる
超高層建築物は揺れの継続時間が長くなる特徴があり、揺れを体感しやすい構造となっています。 地盤振動と建物固有の揺れが共振すると、大きな揺れを感じる可能性があります。
制震構造や免震構造などの耐震技術が採用されていますが、水平方向の揺れが長時間続く場合があります。 船上にいるような揺れを体感する機会も増えます。
4. 防災対策が重要になる
タワーマンション居住者には、飲料水や非常食の十分な備蓄が求められます。 災害時には停電や断水のリスクが高まります。
台風による電気設備の浸水被害で、エレベーターやトイレが長期間使用できなくなった事例もあります。 階段による物資運搬の負担も考慮が必要です。
非常用電源設備の稼働時間には制限があるため、日頃からの防災準備が欠かせません。
5. 維持費用の負担が増加する
コンシェルジュサービスや充実した共用施設により、管理費用が高額化する傾向にあります。 国土交通省の調査では、20階建以上の分譲マンションの月額管理費は平均15,726円となっています。
同調査における修繕積立金の月額平均は12,305円に達しています。
築年数が浅いタワーマンションでは、将来の大規模修繕費用が不確定です。 修繕積立金の追加徴収が必要になる可能性も考えられます。
6. 通信環境に不安がある
タワーマンションでは携帯電話の通話品質が低下することがあります。 携帯電話基地局の電波は下方向に発信されるため、高層階での受信状態が悪化します。
基地局アンテナの設置高は20～50メートル程度であり、10階以上の住戸では電波受信が困難になります。物件選びの際には、通信環境の整備状況を事前に確認することが推奨されます。
タワーマンション購入成功への3つの重要事項
タワーマンション購入に満足している方がいる一方で、購入を後悔する事例も存在します。 以下では、失敗しない物件選びのポイントを詳しく解説します。
1. 収入に応じた価格帯の選定が重要
適切な価格帯の物件選びは、確実な住宅ローン返済を実現する鍵となります。 将来の返済計画を慎重に検討することが大切です。
住宅金融支援機構の調査結果によると、分譲マンション購入世帯の過半数が年収600万円以上です。 住宅ローンの返済額は手取り収入の25パーセント以内に設定することが推奨されます。
年収600万円で月々の手取りが30万円の場合、返済額は7万円から8万円程度が適正です。 管理費用や修繕積立金などの諸経費も含めた資金計画が必要となります。
2. 中低層階も検討対象に含める
高額になりがちな上層階にこだわらず、実用性を重視した選択肢を広げることが賢明です。 眺望や日当たりを重視する方も多いですが、地域のシンボル的建造物への居住を魅力に感じる方もいます。
中低層階は購入価格を抑制でき、階段利用による移動も可能です。 中層階以下でも採光性や眺望に優れた物件は数多く存在します。
3. 将来価値の維持が期待できる物件を選ぶ
タワーマンションは資産価値が安定しており、中古市場での売却価格も維持されやすい特徴があります。 開発予定地域の物件は、比較的低価格で購入できる機会があります。
現在の周辺環境が未整備でも、将来的な価値上昇が見込める物件選びが重要です。 駅近の中古物件でも、大型商業施設や公園などが整備された地域は購入需要が高くなります。
資産運用の観点からも、将来的な売却を視野に入れた物件選びが可能です。
まとめ
タワーマンションは、20階以上の高層建築物を指し、素晴らしい眺望や充実した共用設備など、魅力的な特徴を備えています。
ただし、高額な管理費用や災害時の不安、エレベーター混雑など、注意すべき課題も存在します。 購入を検討する際は、収入に見合った価格帯の選定や、中低層階も含めた幅広い選択肢の検討が重要です。
将来の資産価値も考慮し、立地や周辺環境の発展性を見極めることで、後悔のない物件選びが可能となります。 メリットとデメリットを十分に理解し、自身のライフスタイルに合った物件を慎重に選定することが、充実したタワーマンション生活への近道となります。
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